140字でおさまんないこと

見たい人だけ見てくれ

そこで彼は、如何にもだという態度で尤もだという顔付きで立派に姿勢を正して立っていたので、てっきり私は彼が先輩の言葉をすべて理解しているものと思い込み、質問をしてしまった。

 


「もしもし。実は私はさっきから先輩が喋っている言葉が全く分からないです。日本語かどうかさえも危ういです。だけども、見るに君は先輩の言葉をすべて理解しているのではないですか?よければ優しく教えて欲しいのですが、如何でしょう」

 


そこで彼は堂々と言った。

 


「僕が分かるわけがないだろう」

 


私は面食らってしまった。それはあまりにも彼が堂々としていたということもあるし、堂々としすぎているあまり彼がなんと言ったのかきちんと受け止めることが出来なかったからでもある。彼は続ける。

 


「そもそもだね、君。あいつの言葉を理解しようとしているのが間違いなんだよ。理解しなくていいし、なんならあんなやつの言葉は聞かなくていいよ。ゴミだよ、ゴミ。なぜなら彼は三浪した挙句、現在既に一留するという大罪を犯しているんだからね。一族の面汚しさ。ああしてここで胸を張ってなんだかよくわからない持論を展開しているのも彼が無駄に歳を重ねてきたからに他ならない訳で、彼は今何も知らない1回生の君たちを自分の傘下に取り入れようとしている大馬鹿者なんだよ。だから、君はあいつの話を聞かなくていいよ。道端に落ちているゴミに注意を払う人間なんていないだろう?」

 


機関銃のように吐き出される言葉たちの後に紡がれたその質問はハイかイエスだった。私は素直に首を縦に降り、彼はその姿に満足したのか

 


「それでいいんだよ」

 


と微笑んだ後、またさっきの顔に戻り彼曰くゴミであるところの先輩の話をふんふんと聞き出した。私はこの時、ゴミである先輩のことをあいつと呼んだことから彼は年上であるのかと気づき、今の一瞬見せられた笑顔はなんだったんだと困惑し、彼の目もとでチャーミングに位置されているホクロに目を奪われていた。

いや、端的に言おう。

私は彼に心を奪われていたのだ。

これが私と彼の初めての応酬であった。

可哀想なお蔵入りのやつ

彼女に言われた手順でことを進めた。

 


料理もしたことないから、何かの肉を切るとか初めてで、とても緊張した。家から持ってきた包丁は2丁。1丁を手に取る。どうしても手が震えてしまうのが嫌だった。彼女の喉あたりに包丁の先をあてがう。少し力を込めると、それだけで血の玉がプツっと浮いた。見てはいけないものを見たような気がして一瞬目を逸らす。それからもう少しだけ力を込めて、でも中は傷つけないように包丁を軽く引いてみた。暫くはスススッと切れたんだけど、そのうちに包丁がベタベタになって全然切れなくなった。目を逸らすのをやめた。仕方が無いから自分の制服でそれを拭った。後からそれは脂だったことを知った。それでもベタベタは全然落ちなくて、でも、仕方がないから作業を続行した。暫くしたら全然切れなくなったからもう1丁に取り替えた。思ってたより血は出てないかなと思ったけど、それでも全然まともに歩けなくなったんだから、普通ではあり得ない量がでてたんだと思う。やっと彼女の下腹部あたりまで開腹して、私は包丁を手放した。本当の彼女を覆っているという膜をめくりあげる。この時点ですでに吐き気は頂点に達していて、でも彼女のいる場所で吐き出すだなんて絶対に嫌だったから、私は何回も喉までやってきた胃液を飲み下した。てっきりすぐに彼女の中身とご対面できるものだと思っていたのに、彼女の中身はまだ薄い膜に覆われていた。私はまた包丁をとった。お腹あたりに張っている膜を丁寧に切り取る。中を、傷つけないように。傷つけないように。鼻腔をつく甘い人間の匂いと喉を焼く胃酸のヒリヒリした感覚が相まって視界がグルングルンとまわる。彼女の腹に手を這わせた。私が切った膜がある。そのままゆっくり切れ目に沿って手を這わせる。べろん、と膜が剥がれた。嫌な予感と、なんだかよく分からない達成感があった。頭の奥がチカチカする。彼女をもっとみたくて、障害を切り取ろうと思ったけど、やっぱり硬くて無理だった。そういえば彼女は、電動の鋸でも持ってこないと切れないと言っていた気がする。当時は彼女の姿にばかり目を向けていたから彼女の言葉はあまり理解していなかった。それのツケが回ってきたのだ。だけど、残念だとは思わなかった。ただただ、私は目の前を見ていた。人間ってこんな匂いがするんだと思った。そしてこれはもう彼女ではないのではないかと思った。1度思うと思考は止められなくなって、私はグルグル考えた。感じた。見続けた……。

その時になってやっと私は理解した。今まで彼女だったものは、もうただの物質だった。ただの血と肉で、ただの塊で、そこに存在するだけの、ただの……。

 

彼女が嫌っていたものがそこにあった。

私は彼女のなにが知りたかったんだろう。

彼女の全てを俯瞰する。

 


私は盛大に吐いた。

漫画どうやったら売れるだろう

この漫画もっといろんな人に読んで欲しい!ってよく思う。漫画大好き。そう思うから、安易に私が持ってるの貸すよ!って言っちゃうんだけど、それだと漫画家さんの財布に金が入らない……。というのが悩みだ……。私は漫画文化を愛しているから漫画家に金がはいって欲しい……。

(最初Twitterで書こうとしてたからか文章がいつものブログみたいにならない。困った)

 

どうすればいいのか。

漫画は内容を知ってもらってこそだと思う。内容を知ってもらわないことには人は漫画を買わない。たぶんそれはどこの出版社も思ってるから最近はウェブで全編見れるサイトとかアプリも出ている。し、1話だけとか話数を限定して無料公開とかもよくしてる。

 

でも!!!!!

でも!!!!!!!!!!

でもそれじゃ漫画家に金が入らない!!!!

私は漫画家に金を入れたい!!!!!

というかこんな小手先の話じゃ漫画家に金は入らない。ウェブの閲覧数とか電子書籍を買うことでも金が入るようになってはいるらしいけども!それでも!もっと漫画家に金を入れたい

 

そもそもの話、みんななんで漫画を買わないんだ……?

 

理由はなんとなくわかる。多分みんな貸してもらったりして内容を1度知れば満足しちゃうんだろうな。あとは漫画は娯楽の中でも本当に底辺というか(これは言い方が悪すぎる)消費しやすい娯楽なんだと思う。そもそもの単価が基本1000円未満でバイトしてたりとか金を多少持ってる人間なら手に入れやすい上に、本屋に行けば至る所で大量に手に入る。最近では電子書籍もあってまじでどこでも読める。拘束する時間も単行本1冊なら30分前後かな。手に入りやすい単価が低いどこでも読めて拘束時間も少ない。こんなに消費しやすい娯楽が他にあるか?せいぜいソーシャルゲームぐらいだろう。

それに前述した通り無料で読める場所が増えた。無料で単行本分全部読めたらマジで買う気は起こらなくなる。

内容を知らなければ買う気にはならないし全部読めたら読めたで単行本は売れなくなる……。

 

どうしたらいいんだ〜〜〜〜〜!!!!!

 

私も漫画家に金入れたいからって理由で単行本買うけど、正直ウェブで読んだ部分とかは飛ばしてることが多い。そもそもウェブで読んだから単行本買ったのにまるまる1冊読まないとかもざらにある。

というか漫画自体もクオリティひっくいのに連載して表紙詐欺みたいな漫画もごまんとあるのいけないと思うわ。数増えすぎ。久々に「あ、この漫画表紙可愛いな〜買ってみよう」と思って買った人間が当たった漫画がくそ下手くそだった時よ!その次に買う漫画の購買意欲を確実に損なう気がする。Twitterとかのウェブで適当に上げられてる漫画もくそ腹立つ。漫画界に新しい風をふかすとかじゃなく既存のありそぉ〜〜〜〜〜〜〜〜な設定を登場人物の顔変えてやってるようにしか見えないTwitter漫画見るとくそ腹立つ。しかもコマ割りくそ下手くそやったりするし。お前がその漫画を描く意味は???お前が作者である意味は???

私はウン十年前の漫画業界とか知らないし、きっとその年代にも下手くそな漫画家はいただろうけど、今は明らかにそのクオリティが下がっていると思う。全部Twitterが悪いと思う。安易に出版社はTwitterの作者に作品作るよう持ちかけるな。下手くそ増産するよりも時間かけた作者作れって思う。今の世の中と似てる。何でもかんでも低予算で大量生産大量消費。そんなの消費されるも評価されない下手くそ漫画家たちが可愛そうだ。やめてやれ。読者がわざわざ読者になる必要性がない漫画が世の中に多すぎる。あとジャンルの多様化によって一見さんが何買えばいいのかも分からない部分もあると思う。

 

以上、むちゃくちゃ荒ぶったけど問題点は洗い出せた気がする。

・漫画の大量生産大量消費によるクオリティ低下

・様々な漫画が多すぎて消費者がついていけてない

上記2つが主な漫画側の問題点。消費者の問題点は常に決まってる。所得が低いから漫画に割く金がない。消費者側は社会を変えない限り常に変わらないから、漫画の価値をあげるしかない。

 

ちょっと追記だけど、アマチュアの人物でも普通に漫画が上手い人が存在するのが一般に明らかになってきていて「漫画家」という存在が昔ほど重要ではないのかなとも思った。それこそTwitterに普通の漫画家と遜色ないくらいのクオリティの漫画が大量に投下されているから、きっと消費者側も金を払うって気にならないんだと思う。でも世の中の事情は常に変わるからそれは全然問題じゃない。この事情についていけてないことが問題。

 

 

漫画家に金を入れる読者を増やすには出版社側もある程度漫画家を選別する必要が出てきてるんじゃないのかな……。漫画家もっと大切にしてあげて。

 

以上。

つまらない文章を最後まで読んでいただきありがとうございました……。

おやすみなさい〜

笑いに関する考察

友人との会話。備忘録。

 


笑いとは一体なんのか。どうして生まれるのか。という考えには互いに直ぐに答えが出て、いわゆるギャップから笑いは生まれるという結論に達した。

例えばそれは一般常識との相違である。漫才が面白いのは基本的にここが大きいと私は思う。NONSTYLEが好きなので私はノンスタで例えるのだが、基本的に井上が石田にふる質問・ネタに関しては普通の内容が多い。「朝目が覚めたら鳥人間になったらどうしよう!空飛べるかも!」という井上。ここまでは普通の内容。それに対して石田は「やめとけってお前。次の日今まで筋肉痛になったことの無い部分が筋肉痛になるで」と返す。この回答は普通の感性だと思いつかない、いわゆるギャップである。想定された回答とはひと味違う回答をされることでそこに笑いが生まれるのだと私は思う。ノンスタはこのギャップの部分が限りなくリアルに近いからこそより沢山の人間の笑いを誘発できているのだと私は考えている。

NONSTYLEのことは今はどうでもいい。話を続けます。

しかし、この一般常識を基本とした笑いの取り方は堅実というか確実ではない。なぜなら、常識というのは人によって違うからである。すっごい当たり前のこと。では、どうすればいいか。脚本の設定を使うのである。

例えば。恋人関係にある男と女がいるとしよう。そして、男には若々しい母と少し老け気味の姉がいたとする。事前に女には男に母親と姉が存在することだけが伝わっているが、それがどういう見た目かは伝わっていない。さて、女が初めて男の家を訪ねる機会がやってきた。そんな時、初めに女が男の母に会ったとする。女には男に姉がいることが伝わっているので女は母親を男の姉であると勘違いしたまま会話が進んだとしよう。そしてそこに姉が登場する。女は勘違いをしているので、その老けた姉を男の母親だと勘違いしたまま会話が進んでいく。客の空気と役者の演技が上手ければ、うまく笑いが誘発されることであろう。

笑いの根源はここにあると私は思う。要は、客の中で脚本の設定という常識を新たに作りあげるのだ。そうすれば、漫才と同じ現象がここでも起こるのである。Aさんにとっての常識とBさんにとっての常識は違う。しかし一般常識的にその常識はありえない範疇のものでは無い。しかし、AさんもBさんもさもその常識が当たり前かのように話すが互いに違う話をしていることに気づかない、そういう常識の相違(私はギャップと呼ぶ)ものによって笑いが起こるのではないだろうか。

 

 

 

次に私が友人と話したことは、笑いを誘発させやすい人物についてだった。そしてそこから派生して役者についても言及することになる。

笑いを誘発させやすい人物は、男性ではないかという意見が互いに有力だった。例えば、サマータイムマシン・ブルースヨーロッパ企画のほぼ男だけで構成されているはちゃめちゃコメディだ。本当に面白い。きっと役者が女では成立しえない何かがあると思う。次に、JEWELRY HOTEL。私は同志社の冬プロで観劇した。これも本家は全員男である。

2人でその原因というか要因はなんだろうと考えた。まず思い当たるのは、エネルギー量である。次に、エネルギーの発散。そして、エネルギーを発散させるにあたりそこに躊躇いがあるかどうかだった。

 

話は少し変わるが、私たちは観劇し終わったあとにその劇で1番輝いていた人物は誰かというものを話し合う。その時に1番多いのはやはり男性で、そして女性でもそこに食い込むのは男性の性質を持っているというか、女性らしい女性ではなく少し男性よりの女性ということが多いという結論になった。(3劇団でいうとパのつくあの人や小劇場の〇谷さんやにさわのうんたらさんとか……実名出したくないね……)

 


(私は基本的に人間は皆平等だという意見の持ち主であるから、この結論すごいムズムズするなと思った。本当に、ただ事実を述べているだけなので仕方ないことではあるのだけど……。これ見てる女性で悔しい思いされた方いたらごめんなさい、私も女だから許して……閑話休題)

 

 

 

さて、ここでどうして私たちがそういう男性が有利だと感じるのかをもう少し詰めて考えてみた。

 


①そもそも私たちが女であるからそう感じるのではないか

②男性の方が体力がある→エネルギーが多いからではないか

③そもそも脚本的に男性主人公や男性が魅力的に見える脚本が多い

④学生演劇にそもそも男性が少ない

 


という意見が出た。もう少しあった気もするので思い出ししだい追加します。

①③④に関しては前提の話になるので深追いしないことにします。議論しても無駄なので。

では②である。

これに関しては演劇と違う範囲に関しての話も出た。例えば、世間には圧倒的に主婦が多いがプロのシェフに関しては男の方が多い印象を受けるといった話である。このように、世間はやっぱりある程度男尊女卑が残っているのだと思う。これは私が女だし、ここが日本だからこそ感じるのかもしれないが、多分意思があるとかないとか関係ない部分でそういう意識があるのではないかと私は感じた。友人は、女性は妊娠の期間などで職を離れる時間が出てくるからそこが関係あるんじゃないかと言っていた。むちゃくちゃ説得力あるなと思った。

さて話を本筋に戻す。

本当に、ただ私と彼女が女であるという前提がでかいのかもしれないが、皆さんは舞台上に男優と女優がたっていた場合どちらに愛着が湧くだろうか。私たちは圧倒的に男優だった。

女優には演技を見てすぐある程度の評価を下すのに対し、男優は下手くそだなと思ってもしばらく評価を先延ばしにすることが多い。キャスティングをする時に女優はこの人はこの役出来るというあんぱいに収まりがちだが、男優はこの役なら出来るんじゃないか?化けるんじゃないか?と期待を込めて配役をすることが多い。

あかん、説明面倒くさくなってきた。

要は男性の方が舞台上での物語性というか、そういう人物としての深さが増幅されるのではないかと思うのだ。女性に比べて男性の方が何をするか分からないというか、(何度も言うがこれは私たちが女からかもしれないが)突拍子もない思考で動いてもそれが肯定されるというか。女性の行動の裏にはいつでも思考が働いていて打算だけで動くことが無いという印象が正しいのか……。とにかくそういった印象がある。

もうここまで来ると男性の方が体力があるとかエネルギーを感じるだとか言う次元を超えて、男性だからという理由しかなくなってしまいとても論理的でない。

彼女との話自体はここで終わりだ。あとは私自身の話だとか演劇界隈の話をした。以上に関して思うところある男性いらっしゃれば感想を聞かせて貰えると嬉しいです。

最後は駆け足&適当になってしまい申し訳ない。以上でおしまいです。また加筆修正あれば知らぬうちにヌルりとしときます。

 


おやすみなさい、いい夢を

自己満足ブログ

今1番怖いことの話。

私は演劇集団Qを引退することが一番怖いです。

 

自分語りタイム入ります。

私が演劇集団Qを最初に観劇したのは今からちょうど三年前のことでした。もう少し厳密にいえばちょっと違うんですけど、私がQにハマったのは三年前の新人公演でした。衝撃でした。世の中にはこんな演劇の種類があるんだって思いました。目から鱗でした。一体何がすごいんだろうって考えて、私は演出という役割のことを初めて深く考えました。その人のことが好きになりました。今も尊敬しています。lineが来るとグア!!!ってなります。申し訳なくなります。いろんな色が舞台にあふれて、一番質素な舞台だったのに役者の方の動きだけでこんなに面白い舞台が作れるんだって感動しました。そこから全部のQの舞台を観ています。私に新しい価値観を与えてくれたQの存在が愛しくて愛しくてずうっと好きです。(この際、本当に私がQが好きな証拠がどこにあるのかとか他者と比べて本当に好きと言えるのかとか考えすぎて本当に好きなのかわからない話は置いておきます。)私の性癖は大体ここにあるといってもまあ間違いではないです。

 

 

ちょい関係ない話

上記の件を踏まえると、私は先日引退なされた三回生の方々をちょうど一回生の初舞台から先日の引退公演まですべての舞台をまるっと観てきたということになります。

えげつねえですよ……。

くそくそくそくそ悲しいですよ……。まじで意味分からなかった……。高校の時に部活で先輩が引退したりするじゃないですか。あんなもんの比じゃないですよ。この人たちがここで演劇してくれてる姿がもう見れないのかって……。なんで……。

閑話休題

 

この考えは私個人の考えですので、誰かに押し付けようとは思わないですし、むしろ本能的にQに入った人間が「これがいい!」と思って上演したものがQの歴史を作るからそれはそれでありだなと思います。あくまで私個人の考え方だということは覚えておいてほしいです。↓

 

終演いたしましたブログでも書いたんですが、どうやったら演劇集団Qにふさわしい劇になるかなあってずうっと考えながら演出を付けてました。

もう私にとってここは演劇やるためのサークルとかそういう範囲を超えていて、サークルなんていうくそ軽いチンケな言葉で済ませられるような場所じゃないんだあって思います。なんて言うのが一番適切かはわかりませんが、私にとってここは演劇集団Qっていう唯一無二の場所であるということは確かです。

三年前からここは私の憧れでした。ここに入ることが夢でした。新人終えてから気づきました。二年前に現三回生が新人を迎え今年引退公演を迎えたように、私たちも二年後には引退してしまうんだなって。意味わかんなくないですか???絶対嫌だ。私もっとここにいたい。ここがいい。私は知っています。二年なんてあっという間です。年に何回役者ができるんでしょう。年に何回私は作品を作れるんでしょう。私もっとすごい人になりたいのに、無理なんじゃないでしょうか。みんなよく自分の引退の話ができますね。終わりのことなんか考えていたくない。私引退したくない。

引退が怖いです。

ずっと大学生になりたかったです。大学生になって、私の尊敬するあの人の演出を受けて私の大好きなあの人と共演してやるんだってずっと思ってました。でもそれがなくなった後のこと全然考えてませんでした。いっそずっと高校生のままがよかった。ここにあこがれ続けて、三劇団の劇観て友達とやんややんや意見交換して演劇のこと考えてるだけのほうがずっと幸せだった。だって大学生が終わってしまったら、私は一生演劇集団Qに戻ることが許されなくなってしまう。私ここのOGになりたいからここに入ったんじゃない。どうしてもここが好きで、やっぱりここじゃないとだめだと思ったからここに入ったのに。

やだなあ。引退したくないなあ。

 

 

まあ……こんなこと言っててもまあその時は来てしまうので……。

 

私のただのわがままにすぎないんですけど……。

 

まったく落ちも結論もないつまんねえ感情論なんですけど……。

 

自分のブログだからいいよな……。

 

ご意見ご感想は受け付けてませんので……。

 

おやすみなさい、いい夢を。

昔書いてどこにも出せずじまいだった短編②

 


「死んだんですって」

「…」

「私の夫」

「…」

 


 


「私信じられなくて」

「…」

「しかも夫の体を渡せって言われました」

「…」

「死んだのに」

「…」

「死んだのに、ですよ」

「…」

「…いや、死んだからか」

「…」

「体は生きてるのに」

 


 


「あの」

「何でしょう」

「…いや」

「そうですか」

 


 


「これからどうしよう…」

「…」

「まだ小さいんです」

「…」

「私が養っていかなきゃいけないんです」

「…」

「夫をこのままにしておくのにもお金がいるらしいんです」

「…」

「今ならあなたの旦那さんの体は、他の人の中で生き続けることができますよ、ですって。他の人の体内で生きていたとしても、夫の中になければ意味ないのに」

「…」

 


 


「あ、そういえば花束、ありがとうございます」

「、いえ」

「こんなに綺麗なの、ありがとうございます」

「…」

 


 


「概要は聞きました?」

「えっ?」

「夫の、こうなった理由」

「あ…交通事故とだけ」

「そうですか」

「はい」

 


 


「貧血だったらしいです」

「え?」

「夫。事故の時」

「は、」

「貧血で、ついふらふらと」

「…」

「横断歩道に出たらしいです」

「…」

「碌な食事取れてませんでしたから」

「…」

「あなたは大丈夫なんですか?」

「えっ?」

「会社。今日はどうしたんです」

「…代表してここに行けと」

「波風立てたくないんですね」

 


 


「すいません」

「どうしてあなたが謝るんです?」

「御社が」

「それは会社の責任で、あなたのものではないでしょう」

「しかし」

「そこまで自覚しているのに、なぜ改善されないんだか」

「…」

「辞めたほうがいいですよ、今すぐにでも」

 


 


「脳みそ、小さかったんですって」

「え?」

「夫。CTスキャン?したんです」

「…」

「常人のふた回り程。小さかったそうです」

「…」

「まあ、夫の脳が元々どの程度の大きさだったかなんて知りませんから、それが元の夫の脳の大きさだったのかもしれませんけど。それが意味するのがどういうことなのかなんて分かりませんけど」

 


 


「私……」

「はい?」

「私、会社辞めません」

「そうですか」

「はい、辞めません」

「他人の人生ですからね、私に口出す権利はないと思います」

「毎日通います」

「好きにすればいいですよ」

「辞めずに働きます」

「頑張ってください」

「はい」

「おかあさん」

「はあい。待ってて」

「お子さんですか」

「そうです。今日はありがとうございました。わざわざ」

「いえ」

 

昔書いてどこにも出せずじまいだった短編

 

 

 

「もうだめだ…もういやだ…。もう無理なんだ…」

「ただいま…!!大丈夫?」

駆け寄る女

「もうむりだよ……もう………」

「本当に大丈夫?また…」

「もうダメなんだ。もうだめなんだよ」

「何が?何がダメなの?」

「もう、もう……」

「しっかりして。言ってくれないと分からない」

「………」

黙る男

「………」

黙る女

「…今日の夕飯はなんだっけ」

男の口調は明るげだ

「………さっきコンビニで軽く買ってきたよ」

女の表情は影が差した

「そうだ。風呂に入らなきゃ。朝には会社に行かなきゃ」

「お風呂はもう焚いてあるけど……」

「替えの服を用意しておいてくれるかい?」

「……焚いたけど、シャワーの方がいいかも」

「どうして。風呂に浸かりたい」

「……あなた」

「?」

「クマが酷い」

「いつものことだろ」

明るく笑う男

「………」

暗い表情の女

男は衣服を脱ぐ

女はそれを見つめる

「…………会社、まだ続けるの?」

男は明るく言う

「もちろん。辞める理由がない」

「あるわよ」

「ないよ」

「ありすぎるくらいあるわよ」

「なさすぎるくらいないよ」

「もうお願いだから辞めて」

「どうして。会社は僕を必要としている」

「してないわよ」

「してるよ」

「会社が必要としているのは労働力だけよ」

「会社が必要としているのは僕自身だよ」

「どこがよ。あなたを大切にしない会社を大切にする必要なんてない」

「この間部長に褒められたんだ」

「その倍理不尽ないことで叱られている」

「海外から取り寄せたお茶っ葉を本店の方に出したら好評だったらしい」

「あなたが自腹を切ったものでしょう」

「それにもし辞めてどうする。働くところがない」

「あるわよ」

「ないよ」

「どこにでもいたるところにあるわよ」

「世間は無職に厳しいよ」

「あなたは私を信頼してくれないの」

「信頼してるよ」

「あなたが次の職を探せるくらいの貯金はしてる」

「信頼してるとも」

「なら」

「でも」

「失望はさせたくない」

「失望なんて…そんなもの………」

 


 


「飯を食っていいか?」

「………今温めるわ」

 


 


飯を食う男

無言で見つめる女

突然男が泣き出す

「本当はさ」

「うん」

「本当はもういやなんだ」

「うん」

「もういやなんだ。いやでいやで仕方ないんだ」

「うん」

「………」

「………」

「…最近さ」

「うん」

「最近さ、自分の脳が小さくなっている気がするんだ」

「うん」

「活動をやめている気がするんだ」

「うん」

「ひたすら手を動かすだけの仕事なんだ」

「うん」

「学生時代は一体何だったんだと思うよ」

「うん」

「しばらく考えるということをしていない」

「うん」

 


 


「君の」

「うん?」

「きみのしごとのはなしをしてくれ」

「私?」

「うん…」

「私はね……」

「……」

「私は今楽しいよ」

「うん」

「また私のデザインが採用されたの」

「うん」

「嬉しいものね。学生の頃も楽しかったけど、また違った楽しさがあるわ」

「うん」

「プロになって良かったと思う」

「うん」

「まだまだアマチュアよりなんだろうけど」

「うん」

「先輩もたまに褒めてくれるの」

「うん」

「なかなかなんじゃないって。難しい人よね」

 


 


「…ねえ、本当に辞めないの」

 


 


「最近ね」

「うん」

「調子が悪いの。吐き気がするの」

「大丈夫かい?」

「……うん、まあ」

「それはよかった」

 


 


「僕さあ」

「なあに?」

「将来の夢に、宇宙飛行士って書いてたんだ」

「小学生の頃?」

「思うのは高校まで思ってた」

「どうしてならなかったの?」

「眼がさ」

「眼?」

「悪くなっちゃって」

「そういえばお義父さんも眼鏡よね」

「遺伝なんだ、多分」

「…なればよかったのに」

「眼が悪けりゃなれないよ」

「…そうね」

「勉強したのになあ」

 


 


「…空でも見ましょうよ」

「いいね」

 


 


「ここからあの星まで何光年離れていると思う?」

「分からないわよそんなの」

「僕にも分からない」

「なによ、それ」

「ちゃんと計算すれば出るはずなんだけどね、忘れちゃったよ」

「私も。数学の公式とか、もう殆ど覚えてない」

「そんなもんだよね」

「そんなもんよね」

 


 


「すごいよなあ」

「なにが?」

「月に僕らは行けるんだよ」

「そうね」

「火星にも行ける」

「いつの話よ」

「まだまだ遠い未来だけどね」

「……おじいちゃんおばあちゃんになったら行きましょう?」

「いいね」

「その頃には子供もいるわよ。孫もいるかもしれない」

「それはどうかな。ずっと2人だけかもよ」

「いるわよ、きっと」

「そうだね」

 


 


「ねえ」

「?」

「もう寝ましょう」

「……風呂に入ってないよ」

「いいわよ、お風呂なんて。朝でもいいわ」

「……そうだね」

「寝ましょう」

 


 


「おやすみ」

「おやすみなさい」

 


パチン

暗闇に融けた。